「新しい合唱音楽研究会・関西」第10回例会

「新しいうたを創る会」第7回・第8回関西支部初演演奏会」

開催案内


新しい合唱音楽研究会・新しいうたを創る会

〜"合唱"と"うた"が織りなす新しい音楽世界〜

■新しいうたを創る会 第7回・第8回 関西初演演奏会

  (http://www.nara-su.ac.jp/~nishioka/uta/)

◇第7回委嘱曲
  ・近藤 譲  「茂吉の歌六首」 飯沼京子(Sop) 熊谷啓子(Pf)
  ・新実 徳英 「Anima」 村上怜子(Sop) 岡本真理子(Pf)

◇第8回委嘱曲
  ・一柳 慧  「二つのうた」 江藤美保(Mez) 橋本朋子(Pf)
  ・北爪 通夫 「遊び歌集」 山本佳人(Bass) 禅定佳隆(Pf)

 

■新しい合唱音楽研究会 第10回例会

(http://www.nara-su.ac.jp/~nishioka/shinken/)


指揮:田中信昭  ピアノ:矢野里奈
合唱:新しい合唱音楽研究会・関西

◇「ミチザネの讃岐」 (2001年度 新しい合唱団委嘱曲)
        詩:大岡 信  曲:一柳 慧
◇「Magic Songs」 
        曲:Murray Schafer

2002年5月6日(祝月)
13時30分開場 14時開演
川西市みつなかホール(0727-40-1117)
全自由席 一般2,000円 学生1,000円

阪急宝塚線「川西能勢口駅」より徒歩6分
JR宝塚線「川西池田駅」より徒歩15分
ホールには駐車場がありません

お問い合わせ先:西岡
TEL : 0797-88-1890
FAX : 0797-88-1882
E-mail : shigeki.nishioka@nifty.ne.jp


 

《茂吉の歌六首》…メゾソプラノとピアノのための (2000) Six Poems of Mokichi Saito,for mezzo soprano and piano(2000)

           短歌:斉藤 茂吉  作曲:近藤 譲  

 私はこれまで、声楽曲というものを余り書いてこなかった。実のところ、オペラ《羽衣》(1994)を別にすれば、この《茂吉の歌六首》の6つの歌曲が、日本語の詩による初めての声楽作品になる。 私は長い間常に、日本語という言語の持つ音響的形態と西洋的音楽様式との結合に、漠然とした違和感を覚えてきた。日本語の歌曲作曲を躊躇っていたのは、その所為である。しかし、ただ蹄躇っているだけでは、何も起こらない。取り敢えず書いてみなければ、解決の糸口も掴めまい。「新しいうたを創る会」の田中信昭さんから作曲の打診を受けたとき、そう心を決めて、委嘱をお引き受けした。つまり、この作曲は、私にとって一つの新しい、そして楽しい冒険であった。その結果がどうであったのか、勿論、私自身はそれを判断する立場ではない。ただ、例の違和感は、作曲後の今も払拭されずに私の中に留まっている。

 歌詞として用いたのは、以下の通り、斎藤茂吉の短歌6首である。

T)かぎりなき木(こ)の芽(め)もえつつ春ふけしひとつの山にのぼりてくだる (「寒雲」昭和14年)

U)ひと里(ざと)も絶(た)えたる沢(さは)に車前草(おほばこ)の花にまつはる蜂(はち)見つつをり  (「石泉」昭和7年)

V)なかぞらに音する雨はまたたくまに羊歯(しだ)のしげみに降(ふ)りそそぎけり  (「石泉」昭和7年)

W)風やみし山のはざまは大き石むらがりあひて水を行かしむ (「暁紅」昭和11年)

X)午前四時過ぎたるときにあな寂(さび)し茅蜩(かなかな)のこゑはじめて聞こゆ (「寒雲」昭和14年)

Y)行春(ゆくはる)の雨のそそげる山なかにためらふ間(ま)なく葉はうごきけり (「寒雲」昭和14年)

  短歌という詩形式は、本質的に抒情的な性向をもっている。少なくとも私はいつもそう思う。この6曲の音楽が抒情性の強いものになっているとすれば、それは、私のそうした考えの反映に外ならない。                                近藤 譲

 

ANIMA                              作曲:新実 徳英

●"私"=animaは「風」であり「大気」であり「呼吸」であり、そしてまた「生命」であり「魂」であり「霊」である。  "私"は今、「音」となってここに立ち昇る。

●いわゆる現代歌曲というジャンルは私にとって最も遠いところにあるように感じている。その様式で歌うべき詩がない−あくまでも私にとって、であるが−のと、様式そのものに異和感があるためと思われる。

 今回の作品も現代歌曲としてではなく、声とピアノの為の作品として上記の発想のもとに作曲した。

 テキストはなく、全てヴォーカリーズ−母音の様々な陰翳を伴う−による。 作品自体が一篇の"詩"であるような、そんな「音」を立ち昇らせたい願った。                               新実 徳英

 

二つのうた    長田弘詩集 −黙されたことば− より

                    詩:長田 弘   作曲:一柳 慧

  ピアノとの組み合わせで歌曲を書くのはずい分久しぶりである。これは今回、始原的な内容をもつ長田さんの詩によって触発された選択であると言ってよいだろう。つまり、柔らかい根源的な響きをもった詩に対して、透明感をもったピアノの硬質的な色合いとの重層を求めたいと思ったことによる。

  曲は決して大げさな身振りではない、うたとピアノの静かなデュオといった性格を有している。詩の内容に括抗させる上で、音楽におけるボエジーということにも、意識をめぐらしたつもりである。

  今回、第8回の「新しいうたを創る会」の演奏会に、貴重な作曲と初演の機会をいただいたことに、心から感謝したい。                                            一柳 慧

 

遊び歌集                             作曲:北爪 道夫

 現代の話し言葉は汚れているとはいえ、日本語は発音そのものが固有でありまたリズムの偏平さも独特の性格を保っています。私は日本語を愛しています。それは、意味内容の解釈にたち入るまでもなく、響きそのものの美しさ、面白さによって、発音の存在感が浮き彫りになる、そんな次元からなのです。  

 この作品、響きの片寄りをもたせるために歌詞は私自身で構成したものです。「小猫」は回文で早口ことばの性格を併せもっています。「無理問答」はあ行の問答、現代のダジャレよりもコミックです。「ことわざと」では、諺とともに広告コピーの断片が使われます。「廻る歌」は再び回文、廻る俳句を更に連らねた春先の移る風景です。

                          北爪 道夫