みるく世がやゆら  萩京子


「みるく世がやゆら」について

毎年8月に八ヶ岳で何やらパワフルな合唱合宿が行なわれているらしいということは、かねがね伝え聞いていたのですが、今回作品を書かせていただくことになり、たいへんうれしく思っています。

テキストも形式も自由、と言われて、すぐに思い浮かべたのがこの詩です。

「みるく世がやゆら」・・・「今は平和でしょうか?」という意味の沖縄のことばをタイトルに持つこの詩は、沖縄の高校生(当時17歳)の知念捷さんの書かれた詩で、昨年6月 23日に行なわれた「沖縄全戦没者追悼式」でご本人により朗読され、その映像はニュースでも流れましたし、新聞に詩全文が掲載されました。

私がテレビのニュースで見たのはごく一部分だったかもしれませんが、鮮烈な印象を受け、翌日の6月24日の新聞に掲載された全文を読み、ぜひ何かのかたちで作曲したい、と思いました。

どんな作品にするのが良いか、と切り抜きを眺め暮していたときに、この八ヶ岳ミュージックセミナーで合唱曲を書く機会をいただいたので、では合唱曲にしようと即座に決心したのでした。

知念さんの通われている与勝高校の校長先生宛てにお手紙を書き、ご本人に辿り着き、ご本人は合唱曲になることをとても喜んでくださいました。が、この詩の著作権は沖縄県平和祈念資料館にあるとのことですので、そちらに申請書を出すなどの手続きが必要でした。そしてめでたく許可が下り、作曲のはこびとなった次第です。

私はこの詩のスケールの大きさに蔑かされました。沖縄という場所、今という時代、そこに位置する自分というものがあり、過去、現在、未来、そして世界全体を見据えようとする若々しい視線を感じました。

それは決して観念的ではなく、身近なもの、家族や風景から視線を世界へ移して行くことばの紡ぎだし方がとてもすてきだと思ったのです。
多くの人に聞いてもらいたいという思いと、歌ってもらいたいという思いがあります。