風がおもてで呼んでゐる

原曲はソプラノとバリトンのための二重唱で、谷篤・潤子夫妻から萩京子氏に委嘱され、1992年に初演されている。本日演奏するクラリネットとピアノ伴奏による女声合唱版は、本年度のアルモニ・レジュイの委嘱であり、本日が全曲完成の初演となる。
萩氏はオペラシアターこんにゃく座の音楽監督を務める作曲家であり、オペラやソングなど数多くの曲を書いている。宮澤賢治のテキストを題材とした作品も数多い。
「風がおもてで呼んでゐる」は、東北の美しくも厳しい自然の中で懸命に生きる人々の営みを、時にはユーモアさえ交えながら描写した後、やがて賢治が過労で倒れ、病床での幻覚を経て、ついに精神が肉体から解き放たれ、透明に輝き始めるまでの時間が歌われている。
たった一本のクラリネットが、この曲の味わいを筆舌に尽くしがたいほど豊かにしている。超多忙な中、練習直前の日の未明に東京からFAXで書き上がったばかりの楽譜を送ってくださった萩京子さんに心から御礼を申し上げたい。