《言葉から響きへ》 三善 晃 豊中混声合唱団の委嘱を受け、合唱団が候補とした詩のなかから
選ばせていただいたこの詩で1994年に作曲し、秋に初演された。 日本語の発語が喚起するパラダイムの膨大な世界。そこに漂うイメージの群れが、「語り」を媒体として立ち現れてくるならば、それを音の気配として感知できないか。その気配が、やがてこの蟹と人との宿命の連鎖をこだまのように描き告げてくれるのではないか。 その願いから言えば、これは、「歌」が、初めから歌われるものとして約束された歌ではない。言葉への予感と、言葉による内的変化のために、いつしか私たちの心身そのものが韻律の器となってかすかに響き出す、これは、宇宙と無意識の円環運動の一節である。 (1996年5月12日) |