沖縄から聞こえてくる生命の賛歌と平和への祈り


 

沖縄は、苛烈な歴史を内に抱きながらも「豊饒」が満ちる島だ。数々の苦難の度に、ウチナンチューは、笑顔と歌と踊りで乗り越えてきた。そして、その人々を優しく抱くように、豊かな自然が人々の生活と共にある。ニライカナイに代表される遥かなものへの畏敬と思慕、そして、今、生かされていることへの喜びと感謝。「命どぅ宝(ぬちどぅたから)」という反戦と平和のメッセージもそこから湧き出る思いなのだろう。

寺嶋陸也氏のこの組曲は、単なる民謡の編曲ではない。戦いやまぬ世界、文明の横暴、人間の飽く事なき欲求、地球環境の破壊…。沖縄のスケッチは、これらの問題を溶解し、未来に向かう一筋の光になりうる可能性をも示唆する。中間部に挿入される谷川俊太郎氏の「私たちの星」、そして人々の笑いと涙が沁み込んだ6曲の民謡は、無限の螺旋を描きながら、生命の賛歌と平和への祈りを奏で続けるに違いない。

若者たちの歌と踊りの熱狂が、その激しい祈りの体現であらんことを願う。

客演指揮者 西岡茂樹