豊中混声合唱団 第50回記念定期演奏会 曲目紹介


第1ステージ 「John Rutter 作品集」

豊混は日本の合唱曲を核に据えて活動していますが、日本の作品の何たるかを知るためにも、活動の二〜三割程度は諸外国の合唱曲に取り組むようにしています。昨年はフィンランドのKuulaやRautavaaraの作品に取り組みましたが、今年はイギリスのRutterのアンセムに取り組みました。 「Cantate Domino」は、詩篇96の テキスト“主に向かって新しい歌を歌え”を中心とした華やかな楽曲。「Hymn to the Creator of Light」は16世紀から17世紀にかけて活躍したLancelot AndrewesとJ. Franckの二つのテキストが使われており、二重合唱ならではのドラマに満ちた秀作です。

第2ステージ 「三つの無伴奏混声合唱曲」  

豊混は、これまでに「追分節考」「歌垣」「遠野遠音」「みなまた」「無限廣野」などの柴田南雄先生のシアターピース作品を積極的に取り上げてきました。柴田先生の追悼演奏会とも言うべき「人間について」大阪演奏会(1997年)にも田中信昭先生の指揮で参画しています。 50回記念に柴田作品を取り上げるにあたり、シアターピースをとも考えましたが、演奏時間の問題から断念し、第3楽章の「風」が今年のコンクールの課題曲になったのも一つの契機と考え、初期の小品である「三つの無伴奏混声合唱曲」を取り上げました。1948年の作曲とはとても思えない程、モダンで気品高い曲に、あらためて感慨一入です。

第3ステージ 「宇宙になる」

近年において豊混が新実徳英先生の作品と激しく格闘したのは2004年の「骨のうたう」と2007年の「常世から」です。それらを養分として、豊混が2008年に委嘱・初演したのがこの「宇宙になる」です。 福島の気鋭の詩人、和合亮一先生の溢れるエネルギィに触発され「爆発するように生まれた音たち」には驚嘆しましたが、「三つの愛のかたち」という副題が示す如く、それらは決して無機質なものではなく、むしろ逆に激しい祈りのような愛が底流に滾っているのを感じさせます。この度、初演時の印象を元に楽譜が変更されましたので、新たに改訂版として初演致します。

第4ステージ 「橋上の人」

来年、創団70周年を迎える豊混の最大の育ての親は須賀敬一、現名誉指揮者であり、高田三郎先生でありました。お二人の信頼関係は高田先生がお亡くなりになるまで、微塵たりとも揺るぐことはなく、そして、高田先生は16年間にも亘り、豊混の定期演奏会の客演指揮を務められたのでした。 その須賀が50回記念に選んだのが「橋上の人」でした。作曲者いわく「私の合唱作品のなかでも近づきにくいものの一つ」であるこの曲は今回で6回目の演奏となります。立ちすくむ「橋上の人」が迷いの霧の中を決然と歩みを進めることは、私たちの「現在」と「未来」を暗示しているのでしょうか。昭和44年度芸術祭大賞受賞作品であるこの名曲を、高田作品をライフワークとする須賀敬一氏の指揮と中村有木子氏のピアノで挑みます。

第5ステージ 「葉っぱのフレディ」  

高田作品と並んで、三善晃先生の作品もまた豊混の重要な柱の一つであり、1985年に西岡茂樹が定期演奏会の指揮者に加わって以降、ほぼ毎年のように取り上げてきました。その果実の一つとしては、1994年に委嘱初演した「伝説」があります。 一方、世紀の代わり目において、豊混は、青少年の合唱を支援することを活動方針の一つに加えました。その最も重要な取り組みが「豊中少年少女合唱団」の創設と共同です。同様の動きは大阪府合唱連盟でも起こり、その結果、2003年の大阪府合唱祭で誕生したのが、大人と子どもが共に歌える合唱曲、「葉っぱのフレディ」でした。 アメリカの哲学者レオ・バスカーリアの同名の絵本をもとに三善晃先生が作詞・作曲されたこの曲は、大人と子どもが共に「生」と「死」を見つめる“よすが”として最良のものであると思います。 豊混の三善作品演奏の系譜に、豊少の子ども達も加わり、今、新しい豊混の歴史が確実に記されつつあります。